「パターンを覚えたのに臨床で使えない…」そんな悩みはありませんか?
「PNFのコースを受講したけれど、実際の臨床ではうまく使えない…」
「パターンは覚えたけれど、患者さんにどのように応用すればいいのかわからない。」 「随意性が乏しい、痛みが強くパターンができないから使えない」
このような悩みを抱えている理学療法士・作業療法士は少なくないと思います。
私自身もIPNFA®︎コースを受講する前までは、「パターンを正確に行うこと」が目的になってしまい、思うような治療効果を出せない時期がありました。
しかし、PNFは単なるパターンや筋力訓練ではなく、「患者さんの動きを改善するための考え方や治療の選択」が大切になります。
IPNFA®︎の講習会ではパターンだけでなくPNFの考え方(哲学)、問題を解決する方法(テクニックや臨床推論)、ファシリテーションに必要な要素(感覚刺激や抵抗運動の使い方)など臨床で基本となることを学びます。
今回は、PNFを学び始めた方が陥りやすい失敗を10個紹介しながら、その改善方法について解説します。
① パターンを覚えることが目的になっている
PNFを学び始めると、多くの人はパターンを正確に覚えることに意識が向きます。
PNFパターンは、末梢や近位の持ち方や抵抗する方向、動きの要素や順番など最初は覚えることが多いと思います。
もちろん基本を習得することは大切ですが、臨床では「どのパターンを使うか」よりも「なぜそのパターンを選ぶのか」が重要です。
例えば、歩行時の遊脚期がうまく出ない患者さんに対して下肢の屈曲/内転/外旋パターンを選択する場合も、単純に「背屈を促通できるから」ではなく、「歩行周期中の構成要素やどの代償場面を改善したいのか」を考える必要があります。
パターンは目的ではなく、動作改善のための手段です。
② 評価をせずにPNFを始めてしまう
「筋力訓練でパターンを使ってみよう」「上肢パターンを使えば肩の動きが良くなるだろう」と考え、評価が不十分なまま介入してしまうことがあります。
しかし、評価がなければ治療の目的も曖昧になります。
まず確認したいのは、
- どの動作(FAL)が困難なのか
- なぜその動作ができないのか
- 問題は筋力なのか、協調性なのか、それとも姿勢制御なのか(CIの選択)
など評価から仮説を立て、その仮説を検証するためにPNFを使うという流れが大切です。
別記事でFALやCIなど評価などの考え方を紹介していますので合わせてご覧ください。
③ 抵抗を強くかけすぎる
PNF=抵抗運動というイメージから、必要以上に強い抵抗を加えてしまうことがあります。
しかし、強い抵抗が必ずしも促通につながるわけではありません。
PNFで抵抗運動を行うときは、抵抗は、運動を邪魔するものではなく,運動を助け,導き強化するものと定義されています。これをPNFでは最適な抵抗(Optimal Resistance)といいます。
また、運動方向に合わせた抵抗(arc motion)や重力を考慮して抵抗運動を行わなければなりません。
そのため、患者さんがスムーズに運動できる適切な抵抗を設定することで、協調性やタイミングの改善が期待できます。
動作で必要な筋のコントロールや運動のタイミングが大切になりますので、「最大筋力を出させること」が目的ではないことを意識しましょう。
④ 四肢ばかり見てしまう
PNFパターンを学び始めると、パターンのグリップや運動の要素など手や足の動きに目が向きがちです。しかし、実際の動作では四肢や体幹が協調して動きます。
そのためパターンを行う際は、パターンの部分だけでなく体幹や他の部位にも目を向けて行う必要があります。また、代償動作などにも注意する必要があります。
例えば、運動麻痺や痛みが強い方に対して上肢パターンを行う場合、抵抗力が強かったり、痛みがある状態で強引に正しい運動方向に行うと、体幹や下肢に連合反応や過緊張の状態になることが臨床上多く見られます。
そのため、パターンの要素だけでなく、隣接する関節や全身を見ながら行いましょう。
⑤ パターンだけで終わってしまう
背臥位でPNFパターンを20回行い、「今日は終わり」となっていませんか?PNFの目的はパターンをきれいに行うことではありません。
例えば、
- 起き上がり
- 立ち上がり
- 歩行
- リーチ動作
など、実際の生活動作に結びつけて初めて意味があります。PNFパターンを行うときも、目的とする活動レベルに合わせて側臥位・座位・立位など肢位を変える必要があります。
また、パターンだけでなくテクニック(痛みや姿勢や運動を教えるなど)や歩行周期・起居動作(マット動作)などの介入方法もあります。
筋力訓練だけで終わらず動作を考慮しながら介入しましょう。
⑥ 患者さんへの説明が少ない
PNFでは患者さん自身が動きを理解し、積極的に参加することが重要です。PNFの治療の考え方(哲学)でも目的を持って一緒に主体的に治療を進めていくことが紹介されています。
「この練習は歩くときの足の振り出しを良くするためです。」
「寝返りの時の腰の痛みを改善するためです。」
このように目的を共有することで、患者さんの理解やモチベーションが高まり、運動学習の効果も期待できます。
実際の治療介入後の変化を別記事で紹介していますので、合わせてご覧ください。
⑦ パターンの形ばかりを気にする
正常なパターンの要素に気を取られ、手の位置や足の向きなど細かな形に意識が向きすぎると、本来見なければならない患者さんの反応を見逃してしまいます。
実際臨床では、筋力や可動域の問題でパターンを全可動域で行えないことが多々あります。また、動作によっては全可動域での介入が必要でないこともあると思います。必要なのは、動作の改善のために重要なことを考えることです。
例えば、歩行周期のMstに問題がある場合にOKCで下肢のパターン伸展-外転-内旋を行うのではなく、患側下肢をCKCで固定した状態で、健側や非麻痺側側で屈曲-外転-内旋パターンで放散などの原理を使って介入する方がより機能的で実際の歩行動作の改善につながることがあります。
そのため、臨床で基本的動作やADLに介入するときは、パターンの一部の要素を使ったりテクニックを組み合わせながら、必要な要素を使って介入することがあります。
大切なのは、
- パターンを使って強化したい要素
- どの動きがADLや動作の改善に必要か
- パターンのどの要素が必要か
- 動作が苦手になっている原因(バランスや可動域など)
といったことを考慮して介入していきましょう。
⑧ 即時効果だけを求めてしまう
PNFでは介入後に動きが改善することがあります。固有感覚を賦活するので身体の軽さや動きやすさを実感される方が多いです。
しかし、すべての患者さんで大きな変化が現れるわけではありません。PNFでは目標設定などの考え方もあり、長期目標を改善するために段階的に期間や目標を細分化し一緒に共有していく必要があります。
今日の介入で前後で介入した場面や今週の目標でどこまでできそうなのかなど、治療の経過を提示することがモチベーションにも繋がりやすいです。
一時的な変化だけではなく、繰り返し練習することで運動学習が進み、代償動作の改善や日常生活へ定着していくことも重要です。
短期的な変化だけで判断しないようにしましょう。
⑨ 動作分析や適切な評価ができない
トレンデレンブルグ歩行だから中臀筋を鍛えるパターンを行うなどで治療介入を決めるということはありませんか?
もちろん代償動作の原因で中臀筋の筋力が原因になっていることもありますが、体幹との協調性や歩行周期中の筋のコントロール、拮抗筋である内転筋の過緊張など様々原因があります。
実際に何が原因かを動作分析だけでなく機能レベル(CI)の問題点の評価・検査が必要になります。PNFでは介入するときは動作の分析・評価・検査(FAL)、身体機能の問題・検査(CI)を行います。実用的で簡単に行える検査を行いますので、外来診療など1単位で行う場合にも手軽に使えます。
別記事でFALやCIの例を紹介していますので合わせてご覧ください。
⑩ 「正解」を探しすぎる
初心者ほど、「この患者さんにはどっちのパターンですか?」という質問をすることがあります。
しかし、PNFには一つの正解があるわけではありません。
重要なのは、
- 評価
- 仮説
- 介入
- 再評価
を繰り返しながら、自分なりの臨床推論を積み重ねることです。同じ疾患でも目標や身体の要素は違います。そのため患者さんの身体機能や活動レベルの良いところ(ポジティブアプローチ)や苦手な場面を確認しましょう。
患者さんによって最適な介入は異なります。
まとめ
PNFを学び始めた頃は、誰でも今回紹介したような失敗を経験します。しかし、これらの失敗は「考え方」を少し変えるだけで改善できます。
特に重要なのは、
- パターンを目的にしない
- 評価から介入につなげる
- 動作まで結びつける
- 患者さんの反応を観察する
という4つの視点です。
PNFは、単なるテクニックではなく、患者さんの動作を改善するための思考法です。
焦らず一つひとつの症例を経験しながら、自分なりの臨床推論を積み重ねていきましょう。









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